平成23年度は、当初の研究計画に基づいて、作品調査および資料調査を欧州の美術館・アーカイブ(フランス・国立近代美術館、イタリア20世紀美術館ほか)において行った。「前衛的な古典主義」における葛藤の諸相に関して、対象とする画家たちによる美術史的記述に焦点を当てるという視点から、作品と著述の精読と分析を続けた。その成果の一部は、平成24年2月の日仏美術史学会例会における口頭発表として発信した。 また、平成21-22年度に職務(展覧会事業)との関連において進行していた、シュルレアリスムの芸術をめぐる調査研究を継続した。この調査研究は、複製媒体における絵画作品とオブジェの表象、あるいは雑誌ページ上での「展示」の検証という、独自の視点からの分析へと結実した。その成果の一部は、平成24年度(平成23年度より繰越)にドイツ・国立ゲルマン博物館における第33回国際美術史学会ニュルンベルク大会において、口頭発表(英語)として発信した。本発表においては、20世紀の絵画とオブジェの問題、20世紀の西洋と日本の美術および複製媒体におけるオブジェ、絵画作品、建築とその表象の問題について広く論じた。ニュルンベルク大会においては、国際的な研究者交流を通じて、今後の研究のヴィジョンにとり貴重な示唆を得たとともに、オーストラリアを含むアジアにおけるシュルレアリスムに関する意見交換の機会などをもった。研究代表者は、今後の研究において、本研究課題において萌芽をみた、新たな歴史的ヴィジョンおよび理論的射程に基づいて、イタリアを主とするヨーロッパの芸術の創造の現場とそれをめぐる言説の場における前衛と古典主義の諸問題を検証するための調査研究を継続して行う計画である。
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