本研究は、博士論文「『西行物語』の展開の諸相」においては、同一のものとして扱った『西行物語』諸本中の和歌の語句の異同を、歌集の語句の異同と照らし合わせることにより、どの歌集から取ったものであるか、もしくは、どの本の影響を受けているかということを考察し、『西行物語』諸本の展開について、さらなる検討を加えたものである。 昨年度に引き続き、『西行物語』諸本に出てくる294首の和歌の諸本における語句の異同を精査し直し、1996年にCD-ROM化され2003年に改良版が出版された『新編国歌大観』のCD-ROMと2008年に出版された『新編私家集大成』CD-ROMを活用し、それぞれの和歌がどの歌集にどのような形で出ているか調べ、データベースを作成した。 西行の和歌に関して、寺澤行忠編著『山家集の校本と研究』(笠間叢書255、1993年笠間書院)・寺澤行忠編著『西行集の校本と研究』(笠間叢書359、2005年笠間書院)・寺澤行忠による「御裳濯河歌合・宮河歌合伝本考」(1986年)を手がかりに、収集した諸本を元に『西行物語』に出てくる和歌の語句の異同をデータベース化した。 最後に、データベースを元に、『西行物語』の諸本毎にどの歌集から取られたものといえるか、どの本の影響を受けているかについて検討した。
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