研究実施計画に記した通り、「I.淡路座興行記録の探索、整理/大坂の興行記録とのつき合わせ」「II.淡路座上演テキストの調査/大坂初演テキストとのつき合わせ」「III.淡路の座本仲間記録の調査、分析」を並行して進めた。 Iについては、淡路の地誌に記載されている淡路座の記録を調査し、従来知られているものに加えて、いくつかの新出の記録を見出した。また徳島県立文書館の諸家文書を調査し、淡路座の興行許可願など、江戸時代の記録を抽出した。 IIについては、淡路座上演作品の改訂本文のうち、特に五段目として残っているものを調査し、併せて淡路座上演作品の段構成について分析した。これまでの調査から、淡路座が時代物浄瑠璃を上演する際、五段構成の作品ではないものを五段にみなして上演する傾向があること、そして五段目を増補・改訂する場合が多いことを明らかにしていたが、その具体的事例として『賎ヶ嶽七本槍』を取り上げ、更にその改変の意味を、作品全体の内容変化を分析することによって考察し、論文にまとめた。 IIIについては、南あわじ市淡路人形浄瑠璃資料館に寄託されている上村源之丞座旧蔵資料(引田家文書)の記録を再確認し、それと引田家文書をもとに三田村鳶魚が大正期にまとめた「淡路阿波人形座旧記襍纂」(早稲田大学演劇博物館蔵)をつき合わせ、資料の残存状況を確認した。また座本仲間に関する記録ではないが、引田家文書に含まれる『操曲入門口伝巻』を精読し、その筆者である平野安澄について調査した。 以上の作業に並行して取り組みながら、淡路人形座と大坂浄瑠璃界の交流について、総合的な考察を進めた。
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