本年度は菊池寛の「入れ札」と博文館長篇講談を含む講談本、実記、実録などとのかかわりについて研究を継続し、その成果を大阪市立大学国語国文学会総会(平成24年7月21日)において口頭発表した。 その発表内容をもとに論文「明治大正期の国定忠次もの-菊池寛「入れ札」を論ずるために-」をまとめ、「文学史研究」第53号(平成25年3月20日発行)に発表した。この研究には、文献調査に2年以上を費やしたため、本研究課題の最終年にようやくまとめあげることができ、近代文学作品と講談本の関係を明らかにするという研究目的の一端を果たすことができたものと考える。 また上記の研究においては、「入れ札」で従来調査されていなかった国定忠次もの諸文献との比較を細かく行い、「入れ札」の特異性を明らかにできた。また、やはり博文館長篇講談の大正期文壇への色濃い影響を指摘することもできた。よって本研究課題の目的に沿う結果を得られた。 さらに、平成24年8月30日、所属大学にて主催の上方文化講座にて、「近代の太閤記物-講談本等の人物像を中心に」と題する公開講義を行い、太閤記もの講談と近代文学作品とのかかわりを中心に述べた。研究成果として論文にまとめるには至らなかったものであるが、実録から講談本、近代の小説、戯曲へという流れについて明らかにし、本研究課題に沿う結果が得られた。 上記のような、研究成果の口頭発表、論文公開により、最終年度も本研究課題を遂行した。
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