最初に、伏見院の和歌における王朝文化継承および隠逸詠の具体相を明らかにした。伏見院の源氏取りの特徴は、物語の筋には関係のない自然描写をも摂取するところにあり、『源氏物語』に王朝文化の美意識の典型を見たためと考えられる。持明院統派宮廷文化は、伏見院の代に既に変容しつつあった。院の隠逸詠については、『白氏文集』など漢詩文からの影響が大きい。持明院統派宮廷への禅文化の流入状況は現在研究中である。また、上記と関連して、題材から生々しさを排除して歌語へと再生させねばならない特異歌材の本質、京極為兼の、密教に則った為顕流古今伝授との接触と、京極派歌論との関係を指摘した。
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