本年度は、前年度から準備を進めてきたシンポジウム企画を、日本ロレンス協会第41回大会にて実施した。シンポジウムのタイトルは「ロレンスと第一次大戦-文学、歴史、記憶、神話」。私は、司会・講師を務め、「第一次大戦の〈記憶〉と今、そしてロレンス」という題目で発表した。このシンポジウムにより、第一次大戦当時から現代までの記憶の系譜を整理し、その系譜の中で、ロレンスのテクストと大戦の記憶の関係について明らかにすることができた。 シンポジウムでの口頭発表は、論文「『チャタレー夫人の恋人』、第一次大戦、記憶」として『D.H.ロレとス研究』第21号(2011年3月)に投稿・掲載された。この論文によって、西村孝次賞を受賞した。 8-9月にフランスで、12-1月にオーストラリアで現地調査を行なった。この調査活動により、各国における大戦の記憶に関する豊富な一次資料を入手することができた。この活動によって入手した資料は、昨年度イギリスとベルギーで入手した資料と合わせて、今後、各国の大戦の記憶を比較分析するためのとても貴重な資料となる。 さらに、昨年度・本年度の調査活動を踏まえて、現代イギリス文化における第一次大戦の記憶の諸相に関する論文の執筆を開始した。大戦の記憶の現代的意味を究明するこの論文は、本研究テーマの総括的研究として位置づけられるだろう。平成23年度中に完成させ、投稿する予定である。
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