戦後占領期日本におけるGHQおよびアメリカの民主化政策とアメリカ図書の関係について研究を深めた。その研究成果として、次の重要な発見が成された:1)占領下日本に理想的「アメリカ」を教示する上で、地政学的言説としての「西部」がアメリカを体現する重要なイメージであったこと、2)1)の西部を巡る言説がGHQおよび占領関係機関関係者に共通した認識として共有されており、それはすなわち19世紀アメリカの地政学的言説が、時代空間を越え異文化日本で再生産される可能性を持っていることが示された、3)2)を受けて、戦後日本では「西部」を巡る異国の言説を取り込み再解釈した形での民主化・戦後が形成されていく。よって戦後アメリカ化する日本大衆文化はとりわけ西部という要素を色濃く内在化して形成された側面を持つ、4)戦後日本の西部文学を巡るアメリカの民主化政策は、より広く40年代後半以降の冷戦文化外交政策と連結していた、5)1~4)は戦後冷戦体制下日米がそれぞれの国家的アイデンティティ形成のために相互依存的に行い同時並行的に発生した現象であった―以上5点が今年度確認された研究成果の重要部である。 当研究において最も大きな成果は、四年前の研究開始時には1952年までの日本の占領期間だけを研究の射程に定めていたが、最終的には1960年代までをも含む、より広く大きな冷戦の枠組へと拡大する新展開を得た。とりわけ上記5)で述べたように、GHQ日本民主化政策と冷戦文化形成が連動し、日米両国のナショナル・アイデンティティ形成と結びついていたことを確認するに至った成果は大きいと自負する。
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