発禁処分となったKate O'Brienの作品を入手したことにより初版本の装丁等から米国では学術書なジャンルに分類されていた可能性があることがわかり、英国における"cheap novels"としての扱いとの違いがあることがわかった。これは当時のフェミニズム運動やジェンダーに関する議論の高まりを受けた時期に、Kate O'Brienの作品の評価が英米で分かれていたことを示している。また米国の初版本が比較的多く現存することも両国のKate O'Brien作品への認識の違いを表している。 Field Day Anthology of Irish Writings I~Vに編纂されていた作品のうちI~IIIに描かれた男性の特徴について検証したところ彼らには二つの特徴があることがわかった。一つは支配国である英国の兵士として戦う「強い」男であり、もう一つは英国の帝国主義支配を正当化するために作り出された「弱い」男である。この表象が1937年にアイルランドが北アイルランドを残しつつも国家として独立したものの内外へ国家の独立性を主張するために行わなければならなかった時期になると一転し、「強い」男、特に父親の表象が増えている。ところがIV~Vに収録された女性作家作品には特に「弱い」男の表象が見られることが分かった。そこで描かれる「弱い」男はいずれかの事情により家父長制度からは逸脱した男であることが多い。こう男性像についての検証を今後も続ける必要性があると思われる。
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