本研究はアメリカの大学に広く展開するCreative Writing Program(以下創作科)の歴史とその意義をめぐる言説を実証的に検証し、20世紀初頭から現在に至る文学に与えた影響を、批評理論との関わりにおいて多角的に検討し、さらには今後の方向性を論ずることを目的としており、その内容は詳しくは(1)歴史的検証(2)現代批評理論との関わり(3)グローバルな文学と新たな人文教育の可能性の三点に分類できる。平成21年度は、(1)については、基本文献とりわけMark McGurlの最新研究の読解と関連作品の研究を集中して行った。またアイオワ大学における大学図書館の特別コレクション(特にアイオワ創作科の創設者Paul Engleに関するもの)と国際創作プログラムのアーカイブを調査する機会に恵まれた。(2)については、アイオワ大学国際創作プログラム主催のモロッコでのシンポジウムに参加し、批評と創作の関わりについて世界各国の詩人・作家との意見交換を行った。また、書き手の「声」をめぐる1960年代の実験的美学について、作家John Hawkesの実験授業とJohn Barthの短編集を比較しながら検討し、研究成果を共著書に発表した。(3)については、現在アジア・太平洋地域に急速に広がりつつある英語創作科のカリキュラムを反映して創設された学会Asia Pacific Writing Partnershipが22年3月に香港城市大学で開催した第2回大会に参加し、オーストラリア、東南アジア地区の英語創作教育の広がりについて情報収集することができた。
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