本年度の研究は4年計画の3年目に当たる。実験授業、現代詩の英訳、および小説家デイヴィド・フォスター・ウォレスの作品に見られるクリエイティヴ・ライティング・プログラム像についての研究が主な課題となった。4月から7月にかけて、設置授業「文学I」をプラットフォームに、朗読が創作行為に及ぼす影響を検証した。9月にはOmnidawn社から野村喜和夫英訳詩集Spectacle & PigstyがForrest Ganderとの共同翻訳で出版され、同月中旬にアメリカ合衆国プロヴィデンス、ニューヨーク、アイオワシティ、サンフランシスコを訪れ朗読会、翻訳セミナー訪問、などを行った。これがきっかけとなって共同翻訳や日本の実験的現代詩の翻訳についての研究発表やコメントの機会が増えた。11月には、京都大学英文学会年会でデイヴィド・フォスター・ウォレスの中編小説「帝国は進路を西へ」に見る創作科のジレンマについて研究発表を行った。ウォレスの小説については近年研究が増えてきたが、創作科を切り口とし、精読研究したものは現在殆どない。12月には、創作学会Asia Pacific Writing Partnershipの年会に参加し、実験的文学作品の翻訳について発表を行った。10月から1月にかけては、設置授業「文学II」をプラットフォームに、第2言語、第3言語による執筆が母語における創作過程に及ぼす影響を検証した。 以上、本年度は授業における実験を通じての検証、翻訳成果の発表とその過程の考察、アメリカ現代小説を題材とした実証的研究を発表する機会に恵まれた。
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