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2010 年度 実績報告書

十八世紀英国小説における匿名性とリアリズムの起源

研究課題

研究課題/領域番号 21720102
研究機関東京大学

研究代表者

武田 将明  東京大学, 大学院・総合文化研究科, 准教授 (10434177)

キーワード十八世紀 / イギリス文学 / リアリズム / 小説における時間 / 近代小説とプロット / 匿名性
研究概要

前年度の研究において、18世紀初頭の英国小説のリアリズムが17世紀フランス小説(とりわけ書簡体小説)の影響を受けつつも、文体においてより表現力に富む"affective"な文章を採用したことが新たに指摘された。本年度は、この"affective"な文章によって生じた18世紀英国小説の問題点を考察した。この問題点とは、すなわち事実や心情を詳しく述べるデフォーとリチャードソンの小説において、語り手の「現在」が強調されるあまり物語としての統一感が損なわれていることである。この問題を考えるために、リチャードソンのライバルであったヘンリー・フィールディングの作品をとりあげ、とくに構成美で知られる代表作『トム・ジョーンズ』(1749)におけるプロットと時間の問題を、ジャック・デリダによる時間論(「ウーシアとグランメー」)などを参照しつつ考察し、「Tom Jonesにおける時間」という研究発表を行った。この発表を通じて、本研究の課題の一つである18世紀小説における匿名性の問題は、作者のプロットに対する態度が大きく関わっていることも判明した。この点については、2010年度内にまとめられなかったものの、2011年中に口頭発表と論文執筆を行う予定である。さらに、前年度に続けてデフォー『ロビンソン・クルーソー』とスウィフト『ガリヴァー旅行記』の研究を続け、前者についてはまったく新しい解釈を反映させた翻訳を完成させ(2011年8月出版予定)、後者についても他の二人の研究者との共著として『ガリヴァー旅行記』の徹底注釈を2011年度内に出版する予定である。加えて『Web英語青年』(研究社)にデフォー『ペストの記憶』の新訳の連載をはじめた。ほかに、作者の問題に注目しつつ英語圏と日本の現代文学に関する論評もしばしば行った。これらの研究成果を出すに当たり、2010年8月10日から24日まで英国ケンブリッジとドイツ・ミュンスターで行った資料調査が大いに役立った。このように、科学研究費助成金によって研究を大いに進展させることができたことを感謝する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2011 2010 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 批評の食人鬼(カニバル)(大澤信亮『神的批評』(新潮社)について)2011

    • 著者名/発表者名
      武田将明
    • 雑誌名

      群像

      巻: 1月号 ページ: 342-43

  • [雑誌論文] 責任と勝負の行方(星野智幸『俺俺』(新潮社)について)2010

    • 著者名/発表者名
      武田将明
    • 雑誌名

      群像

      巻: 9月号 ページ: 314-15

  • [学会発表] Tom Jonesにおける時間2010

    • 著者名/発表者名
      武田将明
    • 学会等名
      18世紀イギリス文学・文化研究会
    • 発表場所
      専修大学神田校舎(東京都)
    • 年月日
      2010-10-23
  • [図書] 十八世紀イギリス文学研究 第四号:交渉する文化と言語[論文「イライザ・ヘイウッドの翻訳-模倣と創造」を寄稿]2010

    • 著者名/発表者名
      日本ジョンソン協会[編]
    • 総ページ数
      118-139(433)
    • 出版者
      開拓社
  • [備考] デフォー『ペストの記憶』拙訳を連載(2011年4月号より)している『Web英語青年』のURL

    • URL

      http://www.kenkyusha.co.jp/modules/03_webeigo/

URL: 

公開日: 2012-07-19  

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