本研究は亡命ロシア人作家アレクセイ・レーミゾフと遊戯的秘密結社の活動を通して20世紀前半の亡命ロシア文化について検討し、亡命ロシア文化のヨーロッパ・モダニズム全体への位置づけに寄与することを目的とする。本年度は、以下のことを行った。 1)北大図書館、同大スラヴ研究センター、国立国会図書館にてレーミゾフ、パリの亡命ロシア社会、「若きポーランド派」関連資料をひろく蒐集した。 2)ロシア科学アカデミー付属文学研究所(ロシア、サンクトペテルブルグ)で行われた国際学会(9月20-22日)にて、レーミゾフが自著で言及している「日本の雑誌」の存在について、大正時代のロシア文学受容にからめて発表した。これはレーミゾフの亡命後の足跡、交友関係を知るうえで不可欠とされながらも未着手だった問題に取り組んだものとしておおいに評価された。 3)おもに米国とロシアで蒐集した資料を分析し、日本ロシア文学会全国大会(於熊本学園大学)にて、「レーミゾフの視覚芸術:可能性の枠を越えて」と題する発表を行った(11月6日)。 4)11月の発表をもとにした研究論文をまとめた(日本ロシア文学会誌に掲載決定。平成23年秋刊行予定)。 5)ロシアおよびポーランドのモダニズム文化を比較する一環として、ポーランド・モダニズムを代表する詩人ミチンスキの著作を、詩人の持つ「スラヴ」のイメージと関連付けて検討した。ポーランド人研究者サビナ・ブジョゾフスカによる論考(『タデウシュ・ミチンスキの戯曲における人間と歴史」、ポーランド語)の書評を行った(『西スラヴ学論集』第14号、平成23年6月刊行予定)。
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