研究概要 |
モーリス・ブランショの文学論から出発して文学と視覚芸術の現代的な関係性を解明するという本研究の目的に沿い、以下の研究を行った。 1.ブランショの初期文学言語論に見られる多面体的言語イメージの意味を改めて問い、それをマラルメの「星座(constellation)」モチーフとの関係性という観点から再検討した。「星座」がベンヤミンにおいても思考の基盤となる重要なイメージであることから、ベンヤミンとマラルメの関係性にも着目した。それにより、多面性および同時性のイメージが表象の危機の時代における現代的かつ未来志向的なイメージであることを導出した。研究成果は2009年6月12日に東京大学大学院総合文化研究科表象文化論専攻の小林康夫教授のゼミナールにて「危機と星座-マラルメとベンヤミンの<時代>」として発表した。 2.マラルメにおいて多面体的言語イメージの萌芽はすでに70年代の美術批評に見られる。よって、1876年のマネ論「印象派の画家たちとマネ」を仔細に分析した。70年代の多岐に渡る活動や「群衆」との関わりを踏まえたうえでこの評論を読み解くことにより、モデルニテと密接に関わる「典型」と「様相」という二種類のイメージを引き出した。それらの関係性の検討により、マラルメの詩的イメージの性質およびそれが時代と取り結んでいる関係を明らかにした。研究成果は関東学院大学文学部紀要第116号に発表した。 3.断章形式で書かれたブランショの『彼方への一歩』(Le Pas au-dela,1973)を過去の著作と比較分析し、ブランショにおける「断片的なもの」が「<すべて>への情熱(la passion du tout)」に基づくものであることを明らかにした。研究成果は2010年3月27日土にクリストファー・フィンスク教授主催によりアバディーン大学で行われるブランショ研究会にて発表。
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