最終年度は、これまでに行った福永武彦とその同時代文学者のネットワークの調査と資料収集・データ分析の継続と併せて、積極的な成果公表を行った。 具体的な調査は以下の通り。(1)2011年6月に東京大学総合図書館の図書原簿を閲覧(戦中の外国文学科を中心に図書の移入状況を調査・文献複写)(2)2012年2月に9日間、東大仏文の起源と編成を探るための長崎調査(昨年度より継続)。現地の有識者との面談、遠藤周作文学館・長崎歴史文化博物館・長崎純心大学等にて資料の閲覧・複写、機関研究者との面談を行い、新たな歴史的事実や資料の狩猟が成る。成果発表は以下の通り。(1)2011年7月に白百合女子大学大学院オムニバス授業「異文化の中の日本文学」にて2度の講演(「1930~40年代の日本若手文学者の知的ネットワーク(1)(2)」)(2)上記の講演論集『異文化の中の日本文学』(白百合女子大学アウリオン叢書11号)への寄稿(2012年度刊行予定、3.月中に脱稿)(3)同年11月にお茶の水女子大学比較日本学教育研究センタープロジェクト「近現代日本におけるフランス文化の影響」にて口頭発表(「1930~40年代日本の文化メディア検閲-紙芝居を事例に-」)(4)学術論文「「喪失」の表象のネットワーク-『死の島』のカタカナ使用とフォークナー・原爆文学」(『比較日本学教育研究センター研究年報』第8号、2012年3月)を執筆(5)共訳者岩津航とともに福永の仏語卒業論文の翻訳を完成(第1部と解題を『年報・福永武彦の世界』3号に掲載、2012年3月)(6)「<研究ノート>作品の酵母としての卒業論文-翻訳作業の覚え書に」の執筆(同誌)。(7)2012年3月に国際熊野学会2011年度熊野例会にて口頭発表(「近代文芸のなかの「道成寺」-古典とモダニズムの融合-」)なお(4)は未発表部分と併せて出版予定。長崎調査の成果については論集や地方誌への寄稿が確約済。
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