前年度は主に以下の2点について研究活動を実施した。 1、朝鮮人留学生に関する調査・資料収集 2、参考資料の翻訳・まとめ作業 資料検索・収集活動については、本研究課題開始時より継続して以下の条件にあてはまる一次資料の中心的な対象として行った。 1、朝鮮人留学生に関する日本側の新聞・雑誌記事資料 2、在日本朝鮮人留学生たちの学友会誌である『学之光』などの朝鮮側の記事資料 3、南宮壁や羅恵錫の日記など、当時の生活の様子が示されている資料 当該年度においてはこれまでの収集資料の翻訳作業を本格的に開始したが、とりわけ南宮壁と羅恵錫の文章は、直接的、間接的に日本における朝鮮人知識人留学生たちのメンタリティをよく伝えている。これらの資料は3・1運動後の朝鮮人青年知識人たちの文化や芸術に対する心理的状況やそれと社会や政治との葛藤をよく伝えている。特に留学生たちは2・8運動に当事者としてかかわっていたが、彼らは、日本に対する不信感や拒絶感が絶頂に達している中で柳宗悦という日本人を例外的に受け入れ評価し、そして協力もしている。20年代の日本人と朝鮮人の関係や、朝鮮人青年知識人層の複雑な心理的状況、および柳宗悦の活動の特異性を理解する上で、以上の資料は非常に重要なものである。韓国においても羅恵錫の再評価の機運が高まっているようであるが、日本への翻訳紹介がなされれば、より一層日韓近代文化史の多角的な研究が展開されるはずである。
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