研究概要 |
本研究の目的は、子供の生得的言語能力と言語獲得過程および人間の言語処理メカニズムの実証的な解明である。本年度はまず研究対象となる複文構造を持つ文の理論的先行研究の検討および整理を行なった(消耗品図書支出)。また、言語処理・言語獲得研究における先行研究の収集・整理も行なった。それら先行研究の検討も元に、まず様々な言語におけるargument(項)の具現化に関する図書について書評を執筆した(Pylkkanen, "Introducing Arguments," English Linguistics 27-1,2010刊行予定)。さらに大人を対象としたERP(事象関連電位)実験の準備を行ない、大学生25名を被験者として実験を実施した。これは、日本語の照応詞「自分」を含む、定動詞節を埋め込み文とする複文・目的語コントロール文・単文の3種類の文を解釈する際のERP脳波を計測したものである。現在、基本処理を施したERP波形をグラフ化し、分析・検討をしている段階である。今後その結果をまとめ、言語理論上の意義や言語処理研究における成果を国内学会で発表し論文の執筆を目指す。また並行して、子供による複文構造の獲得過程を解明することを目的とする実験実施を目指し、まず4才~6才の子供を対象として、かき混ぜ文やコントロール文の理解を検証する予備実験をスタートさせた。今後予備実験の検討を経て本実験の実施を目指す。
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