平成21年度は、主に助動詞"会"と"能"を用いた可能表現を取り上げ、領属範疇と可能範疇の関連性について、領属主の「能力(ability)」とその発現という観点からアプローチし、本研究における理論的枠組みの基礎構築を目指した。上記の分析の足がかりとして、領属物の中でも不可譲渡性の高いとされる「属性」に着目し、可能表現を通じて領属主の属性をどのように描写するかについて明らかにした。 まず、助動詞"会"を用いる可能表現は、恒常的、非特定時間的に反復可能な<能力>の発現を表わすことから、その動作・状態の担い手の属性として捉えられ、主体の意志や外的条件に依存することなく、事柄が自然に成り立つことを表わすことを明らかにした。このことから、本研究では、助動詞"会"を用いる可能表現は、「動作・状態の担い手がね備える生得的・習得的能力を以ってその属性を描く」ことを表現意図としていると指摘した。 また、助動詞"会"は、具体的な時空間・条件の中で、動作が個別的・具体的に、どの程度実現されるかを表現する<動作の実現>とは関与せず、<動作の実現>の背景にある動作主体の<意志性>とも関わらないため、望ましくない事態を表わす動作・状態とも共起可能であることを論証した。 本研究で得られた結果は、論文「可能の助動詞"会"の属性描写機能」にまとめ、現在、日本中国語学会学会誌に投稿中(審査中)である。
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