平成22年度は、主に助動詞"会"を用いた可能表現を取り上げ、「可能」を表す助動詞"会"から「上手い」という意味が派生するプロセスに関する考察を通じ、"会"がもつ根本的な表現機能について追究を試みた。 具体的な研究成果は、次の2点に集約される。 まず、可能を表す助動詞"会"は<能力所有>を表す表現であり、生得的に兼ね備えられて、或いは後天的に習い覚えて、やり方を会得している状態を表し、主体の意志や外的条件に依存することはないことを明らかにした。そして、誰もが会得していると考えられる技巧・技能をベースとして、さらに「(一般よりも)上手くデキル」、「優れている、上手だ」といった意に転じていくことを指摘した。 次に、可能を表す"会"と「上手い」を表す"(根)会"は、何れも実際に「動作が(上手く)実現デキル」ことを表す表現ではなく、主体の性格や特徴といった属性を「可能」という観点から捉えることで、主体がどういった人物タイプであるかを描く表現であることを指摘した。また、従来、"弄車/騎馬"のような能動的な習得を要する技能は"很会~"とは共起し得ないと指摘されてきたが、このような典型的技能であっても、主体や描写対象がどのような属性を兼ね備えた人物であるかを描写する環境では"很会~"を用いることが可能であることを明らかにした。 本研究で得られた結果は、論文にまとめ、『中国語教育』第9号、及び『日中言語対照研究論集』第13号(いずれも査読付き)掲載にされた。
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