研究概要 |
本研究は,首都圏方言で「新しい」音調とされる「とびはね音調」(田中ゆかり「「とびはね音調の成立と拡張-アクセントとイントネーションとの協同的(collaboralive)関係-」今石元久編『音声言語のパラダイム』和泉書院2007年)を題材にとり,東京で使用される音調・イントネーションが,全国各地の諸方言にどのように受容されるのか(受容されないのか)を探るものである。本年度では,調査実施のための,環境整備を行った。首都圏における「とびはね音調」は,同意要求文で私用されることが指摘されているため,全国諸方言における同意要求文のイントネーションについて言及した先行研究についてまとめ,近畿音声言語研究会にて発表した。同時に,『日本のふるさとことば集成』(国立国語研究所)を利用し,伝統的方言における同意要求文のイントネーションの音響的特徴について,先行研究での指摘を確認,検討した。また,首都圏における「とびはね音調」の音響的特徴の詳細な記述や,音調生起の言語内的条件の検討(統語関係や,単語のアクセント核の有無)を考慮に入れた調査が不十分なため,首都圏での実態自体を調査すべく,種々の言語内的条件を考慮した調査票を作成した。次年度は,その調査票をもとに,東京,福岡などで,調査を実施する予定である。なお,本研究では,統計の知識や音響音声学的な手法も要求されるが,各種学会が主催する勉強会に参加し,それらの知識の再確認も行った。
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