研究概要 |
(1)音調の伝播の実態を探る前段階として,福岡県北九州市に所在する大学(九州共立大学)の学生を対象に,昨年度行った言語仕様実態調査結果を,「九州共立大学キャンパスことば集(第1版)」として,『九州共立大学研究紀要』第2巻第1号に発表した。 (2)各地における音調の伝播の実態調査は,一個人後からだけではなかなか困難であるため,これまでの研究成果を報告し,さらには今後の研究の展開の可能性として,全国各地の研究者とのネットワーク構築,知見交換を模索するシンポジウムの企画を行うと同時に,そのシンポジウムにおいて,口頭発表も行った(日本音声学会第323回研究例会)。 (3)研究を進めるに従って,首都圏若年層における「とびはね音調」についての詳細な(音声学的)記述をしなければ,日本全国各地における当該音調の伝播の実態を検討することができないと思うに至った。まず,「基準」となるべき伝播の発信源における事象の詳細な記述がなければ,伝播の有無を論じることが出来ないと思われるからである。そのような問題点を解決するために,首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)生え抜きの大学生7組の対話音声(約7時間分)を収録し,自発発話における「とびはね音調」の用例(82例)を採取し,その用例について,統語的,音声学的な分析・分類を行った。これは,読み上げ音声ではなく,自発的な対話音声を対象にした「とびはね音調」の実態を考察した,先駆的な試みである。
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