本年度は、研究実施計画に沿って、日本語における述語現象の記述的整備ならびに、ドイツ語における「自由な与格」と呼ばれる拡張的な与格生成とその解釈の分析に関する研究成果の整理にもとづき、本研究の軸となる「被影響」の概念に基づく分析の適用可能性の検証を進めることができた。まず、[1]Morphology and Lexicon Forum(2010年7月11日於:国立国語研究所)にて、口頭発表を行い(=藤縄康弘氏(東京外国語大学)との共同発表、「所有と関与のあいだ:ヴァレンス拡大の意味論的基盤についての日独対照」)、その成果の一部を公表した。この口頭発表の内容は論文化し、来年度以降、さらにデータ整理をしたうえで、加筆・修正を加え、論文化する予定である(現在、加筆作業中)。次に、[2]昨年度の日本独文学会秋季研究発表会におけるシンポジウム(2009年10月18日於:名古屋市立大学)での口頭発表の内容に、席上での討論ならびに、当日、フロアから得た助言にもとづく加筆・修正を加えたものを、論文として発表した(「日本語における対格の生起と「関与」の概念-被影響(affectedness)をキーワードとして-」日本独文学会研究叢書073所収)。さらに、ドイツ語における「自由な与格」生成と解釈に関する分析については、[3]Zwischen Possession und Involviertheit--Zur semantischen Basis der Valenserweiterung im deutsch-iapanischen Kontrast--(=藤縄康弘氏との共著、『ドイツ文学』141号(Band 9/Heft 1))として、論文化した。[3]は、主としてドイツ語学研究のフィールドにおける本研究の意義を問うものであったが、来年度(以降)は、日本語・英語の述語現象分析を中心に、国際学会でその意義を問うべく、口頭発表の準備を進めている(2011年9月7日~10目、The University of Manchesterにて開催予定のLAGB Annual Meeting 2011に投稿中)。
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