研究概要 |
本研究では、(a)終結語尾と分析的な形の共起制約、(b)各終結語尾が本来持っている文脈的意味の把握・整理、(c)談話・語用論的機能からの考察という3つのアプローチによって、朝鮮語の終結語尾による「話し手の心的態度」の類型化を試みることを目的とする。 今年度は、平成21年度に行った形態の選択に沿って文脈的意味を記述し、整理した。また(c)に備えた自然会話のデータ収集を昨年に引き続き行った。 上記の調査に加えて今年度は、終結語尾の中でもこれまで扱ってこなかった下称叙述形語尾である'-nta/-nunta'の語用論的機能についての考察を進めた。'-nta/-nunta'は、話しことばで主に使用される半言'-e','-ney','-ci','-ketun'と待遇法の等級が異なるだけでなく、新聞や論文などの書きことばでも使用されるという特徴がある。'-nta/-nunta'に関する既存の研究では不特定多数の読み手を対象とした書きことばでの使用が強調されており、話しことばで使用される点については、年齢・社会的地位において話し手よりも下の者に対して、あるいは親密度の高い間柄で使用されることが指摘されているのみで、語用論的機能についての詳しい考察は見当たらない。 話しことばを資料として考察した結果、'-nta/-nunta'は多様な語用論的機能を有することが明らかとなった。これについて現在、論文(「話しことばで使用される'-nta/-nunta'」)を投稿中である。
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