近代中国における西洋「文化の受容と語彙の創造」で、西洋人キリスト教宣教師の活躍が中国語に大きな影響をもたらした。代表的な成果として、初期中国語訳聖書類や中国語研究の著作の数々がある。本研究課題は、関連する資料を収集・整理・電子テキスト化し、それらを利用して「異文化の翻訳と中国語研究」について調査・考察を行おうとするものである。 2010年度は、まずプロテスタント宣教師であるモリソンの中国語会話テキストにおける記述について、昨年度からの考察を継続し、その成果の一部を韓国・鮮文大学で行われた国際シンポジウム「清代民国時期漢語国際学術研討会」で発表した。同テーマの論文については、2011年度に出版される論文集に掲載予定である。また、モリソン後のプロテスタント宣教師であるメドハーストが、モリソンを踏襲して出版した中国語教材における記述についても考察し、その成果の一部は、イタリア・ローマ大学で行われた国際シンポジウム「"欧洲人的漢語研究歴史"国際研討会曁世界漢語教育史研究学会第三届年会」にて発表し、これをもとに加筆修正した論文「メドハーストの中国語教材にみる官話の一端」を『文明21』26号に掲載した。 また、2009年度より継続しているロンドン大学SOAS図書館、大英図書館での資料調査に加えて、2010年度はケンブリッジ大学図書館での資料調査・収集も行った。この調査では主として、同図書館での所蔵が明らかになった中国語訳聖書稿本『四史攸編』の新たな稿本(ケンブリッジ本)と既存稿本(大英図書館本、ローマ本など)との対照を行い、写真資料を申請し受理された。同調査での成果をもとに、論文「近代の中国語訳聖書の系譜に関する覚書き-バセの『四史攸編』を中心に-」を『言語と文化』24号に掲載した。 このほか、現在までに収集した資料の電子テキスト化の作業を進行中である。
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