研究概要 |
本研究では日本語と韓国語の(対訳)小説、ドラマのシナリオデータ、コーパス、新聞の社説、ラジオ番組のデータなど、談話資料に基づき、両言語の文末形式、とりわけ、「のだ」と「KES-ITA」に関して記述、分析を行った。その研究成果の一部として、研究実施計画で計画されたように、すでに国内・国際学会にて口頭発表(3件)を行い、論文(1件)を執筆した。これまでの研究を通して、韓国語の文末形式「KES-ITA」は談話資料のジャンルによって、変異形の現れ方、生起頻度において差があることを明確にし、この成果を、日本言語学会(第138回大会)において口頭発表の際に反映させた。また、日本語との対照分析を行った結果、「のだ」文の方が韓国語の「KES-ITA」に比べて、体現する意味範囲が広く、機能語として発達していることが確認でき、結果として、韓国,日本連合学会(第7回大会)における口頭発表及び、「言語学と日本語教育6」の投稿論文に記述した。 さらに、両形式について文法化の意味変化のメカニズムの知見を援用した理論的分析を行った結果、「のだ」は話し手のみならず、聞き手への指向性が高い文末形式として文法化が進んでいることを記述し、この成果として、韓国日本学会(第80回大会)において報告を行った。これまでの研究より、地理的に密接なかかわりを持ち、文法的にも類似性の高いと言われている日韓両言語においても、文末形式の文法化の進度が異なることが確認できた。この点、単なる日韓対照研究にとどまらず、言語類型論における文法化の理論の構築において貢献できる可能性が示唆された点で本研究の意義があると考える。
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