研究概要 |
22年度は,21年度における研究成果,すなわち「文レベルで観察できる属性叙述の記述」を基礎にして,「談話レベルで観察される属性叙述の記述」へと研究対象を拡大した。まず,日本語と中国語における名詞述語文・二重主語文を小説データベースの中で観察し,それぞれ談話の中でどのような構文の分布を示すか検証を行った。その結果,日本語は譲渡不可能性の高い物のうち,身体部位以外の属性叙述では名詞述語文に偏る傾向が大きく,中国語はどちらかというと二重主語文に偏る傾向が見られた。これは対訳データベースなどを用いて検証されたことである。この研究成果は雑誌論文1件(2010年6月),口頭発表1件(2011年3月)を通じて公表した。 また,書きことばの談話でだけでなく,話し言葉の談話にも着目し,21年度より継続して自然会話データを収集した。23年度以降にデータベースを作成する準備として,約30時間の複数人(2~8名)による会話の映像・音声データを得た(これらは23年度以降の収録データとあわせて,WEB上で公開する予定)。また,自然会話を観察することで,属性叙述の記述に必要なモデルの構築を行った。具体的には,叙述の「時間性」,「具体性」,「特定性」,「有標性」がそれぞれ独立のパラメータであるかどうか,また属性叙述の記述に「評価」がどのように関わるかを検証した。また,社会心理学領域の属性認知に関する理論(「対応推論理論」,「ネットワークモデル」,「スキーマモデル」)を用いて,それが談話分析にどのように応用できるかを検証した。これらの研究成果は23年度に引き継ぐ。
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