研究課題
平成22年度は、キリシタン版『羅葡日辞書』(以下「ラポ日」)の注記と原典であるラテン語辞書カレピヌスとの対照、ラポ日と『日葡辞書』(以下「日ポ」)との対訳部分の違いを中心に、引き続きラポ日の本文調査を進め、その成果である1)2)を発表した。さらにそれらを基づき、3)の考察を進めつつある。1)ラポ日の引用注記ラポ日では原典カレピヌスに基づく古典作家名が注記のみで記されていることがあるが、多く名前が見えるのはプラゥトゥス、ヴェルギリウスらであり、キケローのラテン語を模範文例として多数引用しているカレピヌスとは傾向が一致しない。これはラポ日がそれほどレベルの高くない日本のラテン語学習者を対象にしたために、古語・詩語などやや特殊な語に注記の必要を認め、上述のような作家名を記したのではないだろうか。2)ラポ日と日ポの対訳の違い平成21年度においてすでに、「脾臓」「南蛮」の語についてラポ日のポルトガル語・日本語対訳と日ポの日本語・ポルトガル語対訳のずれがあったことを解明したが、本年度は関連語である「腎臓」や「天竺」などについても調査を進め、やはり同一辞書内または同じ日本イエズス会の編纂物内で日本語語義の解釈にゆれや変遷が見られることが確かめられた。これらの例からも、ラポ日と日ポについて編纂上の関連性(例えば同一人物が両書に関わっているなど)は今のところほとんど認められない。3)ラポ日特有の日本語ラポ日の日本語訳中、日ポには収録されていない語や、日ポにはあってもその他ではほとんど用例の見えない語も少なくない。これらの語義の解明には、カレピヌスとの対照が有効な場合がある。
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Proceedings of the XIV EURALEX International Congress
巻: (CD-ROM) ページ: 1020-1025
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