本研究では、日本語の「書き言葉らしさ・話し言葉らしさ」の計測方法を設計するため、(1)英語研究などで用いられている既存の計測方法を用いた「書き言葉らしさ・話し言葉らしさ」の測定、(2)既存の計測方法の評価及び問題点の整理(言語学的分析・統計的検証)、(3)有効な計測方法の設計、及び、論文発表やWebによる発信の手順で研究を行う予定である。平成22年度は、(2)既存の計測方法の評価及び問題点の整理(言語学的分析・統計的検証)を行った。具体的には、量的分析法としては「語彙密度(lexical density)」の日本語における適応方法を考案し、これを国立国語研究所が中心となって構築した『現代日本語書き言葉均衡コーパス』に適用し、「書き言葉らしさ・話し言葉らしさ」をテクストにおける情報の密度という観点から計測した。計測結果を日本図書コードなどの情報と比較し、語彙密度が表す値の性質について評価した。また、質的分析法としては修辞ユニット分析(Rhetorical Unit Analysis)の日本語への適応方法を考案し、「書き言葉らしさ・話し言葉らしさ」をテクストの脱文脈度(具体的な現象を扱うテクストか、一般的な現象を扱うテクストか)という観点から測定した。計測結果を、被験者3名の「書き言葉らしさ・話し言葉らしさ」の印象と比較し評価した。さらに、これら2つの観点に加えて、テクストの主観性と客観性が「書き言葉らしさ・話し言葉らしさ」に影響することを考慮に入れて、ブログやインタビューなどに現れる「よい」「わるい」などの評価表現の分析も行った。平成23年度は、評価結果を踏まえて計測方法を改善し、これを社会に発信する予定である。
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