研究概要 |
本年度は,市区町村の発行する広報紙を公共情報媒体(多数の人の目に触れることを前提として発行する文書)として捉え,そこで用いられる漢字字種の地域差についての調査と分析とを行った。 資料調査は,サンプリングで収集した広報紙を対象としたほかに,行政資料アーカイブとしてさきがけでもあり,資料の充実している山口県文書館において調査・収集を実施した。 分析は,各市区町村で発行されている広報紙に,行政情報媒体という共通点と,地域情報という相違点とがあることに注目して行った。広報紙で用いられる漢字字種には,各紙に共通して数多く出現する「広報紙の特徴漢字」と,特定の地域でのみ多く出現する「地域の特徴漢字」とがある。地域の特徴漢字には,地名表記に用いられるものと,その地域の必要とする情報に関わるものとがあり,後者が特にその地域の「常用漢字」と位置付けられる。 全国で共通する「広報紙の特徴漢字」は,サンプルカバー率の高さによって抽出した。「地域の特徴漢字」は,全国を8ブロック(北海道地方,東北地方,関東地方,中部地方,近畿地方,中国地方,四国地方,九州・沖縄地方)に分けて分析を行い,全国でのサンプルカバー率との差が地方において+30%以上の漢字を抽出した。その結果,関東地方・中部地方では,地域の特徴漢字は抽出できなかった。 この分析の成果は,口頭発表予稿集「ジャンル別に見た特徴漢字-書籍のジャンルと広報紙」として発表した。
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