研究課題/領域番号 |
21720178
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
堀田 隆一 中央大学, 文学部, 准教授 (30440267)
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キーワード | 英語史 / 言語変化 / 歴史言語学 / 語彙拡散 / 中英語 / 近代英語 / コーパス言語学 / 方言 |
研究概要 |
本年度の研究の目的は、語彙拡散の視点から英語史上の複数の言語変化の事例を質的・量的な観点から記述し、同時に語彙拡散を理論として洗練させることであった。扱った研究題目は、(1)「中英語期の名詞複数語尾sの発展」と、(2)「同時期の形容詞語尾eの衰退」の2点のほか、新たに(3)「近代英語期の名前動後を示す単語ペアの増加」を加えた。 (1)については、中英語説教詩Poema Moraleの異本比較がs複数の発展の研究に寄与するとの判断から、現存する7異本の分析を進めてきた。写本参照のためにケンブリッジ大学に訪れてテキストの理解を深めることにより、間接的にs複数の発展を明らかにする準備が整ってきた。来年度は、既存の電子コーパスも援用し、より直接的にs複数及び関連する言語項目の分布を調査する予定である。現在、関連する論文が審査中。 (2)では、中英語テキストKyng Alysaunderを対象として、複数のパラメータを設定し、e語尾の有無を量的に調査した。この成果は日本英文学会全国大会にて発表した。その後、電子コーパスを用いて広く初期中英語テキストを対象とした同種の研究が進行中である。その成果は、来年度の学会及び論文にて公表予定。 (3)は、本年度より新たに加えた研究題目であり、本研究計画の趣旨に照らし、目下、大きく期待できる題目である。(1),(2)とは異なり、現代英語でまさに進行中の事例であるため、語彙拡散を結果としてとらえるだけでなく過程として観察することができるという利点も期待できる。この題目についてすでに論文を1本公表しており、現在、来年度の学会及び論文での公表にむけて準備中である。 以上、語彙拡散の立場から、英語史上の3つの問題の共通項をくくりだし、英語史記述に新たな可能性を与えるべく努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究の目的」では、(1)語彙拡散を理論として洗練させる、(2)異なる時代にまたがる言語変化の諸事例を扱う、(3)質的・量的な観点から記述する、の3点を目標に掲げたが、(1)は上記「研究実績の概要」の第3の研究にて一定の成果をあげている。(2)については、3つの異なる研究題目により初期中英語から現代英語までの広い時代幅を覆っている。(3)では、写本を参照しながらの異本比較で質重視の研究を、コーパス利用により量重視の研究を、それぞれ遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、上記「研究実績の概要」で挙げた3点の研究(「中英語期の名詞複数語尾sの発展」「中英語期の形容詞語尾eの衰退」「近代英語期の名前動後を示す単語ペアの増加」)に集中する。本年度は研究そのものに集中したため、研究成果の公表が限られていたが、年度末までに準備済みおよび準備中のものを含めると、最終年度となる来年度には多くの実りある成果が見込まれる。今後は、研究成果の公開に注力する予定である。
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