本研究は英語の構文の中でも特に動詞の項構造を中心としたもの(動詞構文)を取り上げ、それらを1つのネットワークとして計算機上にデータベース化することを目的とした3年計画(2009年~2011年)の研究プロジェクトである。2年目である2010年度には、以下のような成果が得られた。 1.構文ネットワーク構造の記述について検討を重ね、これまでに開発してきた形式概念分析(FCA)を用いた方法が、構文文法、認知文法、語文法といった理論と互換性を持つことを明らかにした。その成果は京都言語学コロキアム第7回年次大会(KLCAM-7)、および日本認知言語学会第11回大会(JCLA-11)で発表された(後者は研究協力者である淺尾仁彦氏との共同発表)。また、論文「構文のネットワークモデルについて:二重目的語構文を中心に」が『認知言語学論考No.9』(東京:ひつじ書房)に掲載された。 2.動詞構文ネットワークのデータはまだ完成していないが、計算機上で表示するためのプログラムの大幅な改良を行った。またそれを利用してWordNetの語彙概念構造データをヴィジュアルに表示するWebアプリケーションを制作した。このアプリケーションでは、指定された語の関連語や語同士の関係を分かりやすく表示するほか、選択した語彙レベルに応じて表示項目をフィルタリングすることができるため、英語の語彙指導に有用である。本研究プロジェクトでは当初から言語教育などの分野での応用が達成目標の1つとなっており、この面で一歩前進した。この成果をまとめた論文「第二言語語彙指導のための概念地図利用の可能性」が『比較文化研究No.96』に掲載された。
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