本研究は英語の構文の中でも特に動詞の項構造を中心としたもの(動詞構文)を取り上げ、それらを1つのネットワークとして計算機上にデータベース化することを目的とした3年計画(2009年~2011年)の研究プロジェクトである。最終年である2011年度には、以下のような成果が得られた。 (1)前年には構文ネットワーク構造のあり方について検討を行い、構文文法や認知文法の考え方に一致した記述法を開発したが、本年にはその成果を論文「PLMとFCAによる構文ネットワークの記述について」としてまとめた(『日本認知言語学会論文集 第11号』研究協力者である淺尾仁彦氏との共著)。また、そこで得られた知見を応用して進めた構文研究の成果を第11回国際認知言語学会において発表した("A Corpus-based Approach to English Ditransitive Construction:The Causal Relation of Two Events")。これら一連の研究は、これまである種の理論的メタファーとして用いられてきた「構文ネットワーク」の考え方に、実質的な裏付けを与えるものである。 (2)理論的な考察と並行し、本研究ではコーパスやウェブから言語事例を採取して、基本的な動詞構文のデータベースシステムを構築してきた。前年に引き続き、本年においても基本データの採取・整形を行い、これらをネットワークとして構造化するプログラムの開発を行った。全体としてのシステムは必要な調整を行った後に公開の予定である。本システムを用いることで、従来は文献を紐解いて一つ一つ調べなければならなかった動詞構文パターンを計算機上で容易く一覧できるほか、同種のパターンを持った語群を視覚的に確認することができる。様々な自然言語処理関連の目的に利用可能である他、英語学習者の語彙習得支援や作文支援に役立つと考えられる。
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