研究概要 |
日本語母語話者と外国人日本語学習者が日本語で文章を読む場合、母国語に翻訳された日本語の文章を読む場合の読解プロセスにおけるプロトコル分析から、使用された読解ストラテジーを整理し、理解出来た読み手が用いたストラテジーを分析した。1.理解のモニタリング、2.予測と検証のストラテジー、3.Transaction読みが、構造ストラテジーを補い、難解な文章の理解を助けることを示した。理解のモニタリングとは、理解についての理解(メタ認知)を確かめ、従事している活動をモニターするものである。予測と検証とは、文章の内容や展開を予測し、後続する文章を読んだ時点で予測との整合性を検証するものである。外国語として日本語を読む場合には予測検証が多く用いられ、特に文章の前半で文脈を確立するために忙しく予測が用いられていた。Transaction読みとは、情報の単なる受容者としてではなく信憑性やレトリックを検討する批評家として読むものである。この読み方は日本語の文章を翻訳した自国語で読む場合で多く用いられ、トップダウンストラテジーの補完として用いられた。さらに読解ストラテジーの結果を効果的な読解促進材料の作成につなげるために読み手の思考・学習スタイルとの相関を得た。日本人では修復ストラテジーと具体性思考に負の相関、修復と両存特性(甲田,2008)に正の相関が、外国人日本語学習者では予測検証と理解の順序(同時的)に正の相関、修復ストラテジーと情報入力、能動性に正の相関が見られた。
|