日本語母語話者の読解プロセスを検討するために、日本語を外国語として読む場合、日本語から学習者の母国語への翻訳版として読む場合という条件を設定し、母国語(韓国語、タイ語、中国語、アラビア語)の違いを加味して、国際比較を行った。この成果は、International Reading Associationの国際大会で公表した。外国語として日本語の文章を読む場合には、予測・仮説設定と検証のストラテジーの使用とTransaction(自己関与)の読み方が理解促進の鍵となっていることを示した。このような指摘は、自己関与の読み方は批判的読みにつながるものであり、能動的で情報を検討し、問題解決として読み進める読み方が理解の促進を助けることを示すものである。また、仮説を設定し、それを検証し、自己理解が正しいかを吟味する読み方は、メタ認知研究ともつながるものである。このような点から、能動的で、理解をチェックする読者の役割について検討した。これまで検討してきた、日本語母語話者と外国人日本語学習者との間での、ボトムアップ、トップダウンストラテジー等の構造ストラテジーの使い分けの困難さを克服するストラテジーとして、仮説検証ストラテジーと自己関与読みを位置づけた。読解の仕方と、思考・学習スタイルとの相関を調べ、日本人では修復ストラテジーと具体的思考に相関が見られたという結果から、具体的思考の軸(sensingとintuitive)という特性が教育場面にどう関わるか検討した。そして、定型通りの問題解決を好むか、あるいは普段接したことのないパターンの学習対象であっても、何とか問題を設定し新たな解決策を探るのを好むかという二方向の軸があり、日本語のレトリックを理解しようとして仮説検証を多用した読者は、問題解決者としての学習傾向が見られた。
|