本研究の目的は、外国人と日本人の敬語選択が導かれる話者の意識とその規定要因を明らかにすることである。異文化間コミュニケーションにおける外国人日本語話者と日本語母語話者間のコミュニケーションスタイルの解釈と評価のメカニズムを明らかにするため、1年目である平成21年度は、研究の中心である外国人日本語話者の待遇レベル選択の意識に関して、意識構造を浮き彫りにするための手法である「個人別態度構造分析法」(以下、PAC分析)を用いた調査及び分析を中心に計画を実施した。具体的には、2002年3月に大阪で外国人日本語学習者の敬語使用に関するパイロット調査を行った後、同年9月から2010年3月にかけて茨城大学、2010年2月に関西大学において本調査を行った。海外においては、2009年9月に台湾、2010年3月に韓国において調査を実施した。調査終了後、インタビューデータの文字化及び各データに関する分析を進めた。それと同時に、大規模な量的調査実行のため、質問紙調査の作成に努めた。 平成21年度の研究成果の発信としては、第一に、2009年9月13日に大阪大学ヴィゴツキー研究会における「日本語学習者における敬語使用意識に関する研究」という題目での研究発表が挙げられる。第二に、2009年12月に台湾で開催された2009年度「台湾日本語教育研究」国際学術シンポジウムにおいて、Non-native日本語教師を対象とした対日イメージに関する発表を行うことで本研究の手法であるPAC分析の分析結果と有効性に関する示唆を得た。さらに、研究成果の発信として「日本語学習者の敬語意識:PAC分析を用いた事例研究」という題目で、7月に行われる「2010世界日本語教育大会」での発表が決定した(2010年3月採択)。平成21年度は初年度で調査及び分析が中心であったが、2年目の研究成果の発信に繋がる計画が遂行できたと思われる。
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