本研究の目的は、日本人と外国人日本語話者のコミュニケーションにおける重要な要素である待遇レベル行動の解明の一環として、外国人日本語話者が日本語での待遇レベル選択をいかなる意識で行っているのかを明らかにするため、外国人日本語話者の敬語及び敬語使用意識について考察するとともに、日本語コミュニケーションにおいて外国人日本語話者の敬語選択が導かれる規定要因を探ることである。最終年度である平成23年度は、これまでの分析データ数をさらに補充し、韓国人日本語話者、台湾人日本語話者の「敬語・敬語使:用」意識に焦点を当てて分析・考察を深めた。 平成23年度の研究成果として、研究論文2件を発表した。第一に、学術雑誌『ユーラシア研究』(第8巻4号)に掲載された「韓国人日本語学習者の敬語観に関する一考察」が挙げられる。分析の結果、韓国人日本語話者の特徴として、敬語が韓国における家庭での敬語教育と結びつけられ肯定的に捉えられていること、また、敬語を日本と韓国に共通して存在する、社会生活を営む上での重要な文化的産物として捉える傾向が観察された。第二に、台湾人日本語話者の敬語意識に関する分析結果について、『多元文化交流』第4号に発表した。調査対象者が持つ日本社会における礼儀、マナーに対する肯定的評価は、それを表す手段としての敬語に対する肯定的イメージを形成する要因となっている一方、否定的な敬語意識は、第一言語である中国語とは異なる日本語の敬語体系に対する心理的距離及びそれらの使用のプレッシャーに向けられており、日本の敬語を簡素化すべきとの意識形成に結び付いていた。また、日本人との相互作用といった具体的経験が敬語観に影響を与える様相が確認された。
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