研究概要 |
本研究は,日本語学習者を対象とした日本語読解において,自己モニタリング(comprehensionmonitoring)の働きを促すための学習法を検討することを目的としている。自己モニタリングとは目的に応じて自分の理解の状態を評価し,それに基づいて読みをコントロールすることであり,文章理解をはじめとする読解の目的遂行に関与する。本研究では,自己モニタリングを促すための学習法として,文章の内容を他者に説明する活動を提案し,これを取り入れた読解学習プログラムを作成することを目指す。 平成21年度(研究1年目)は,具体的な検討課題として,学習者が文章内容に関する質問を作る課題を取り上げ,授業内で実践する方法を検討した。本課題を取り上げたのは,文章理解への効果が既に認められていること,個人内での文章理解ではなく他者への働きかけを念頭に置いた活動であることからである。実践授業では,教示が質問の質を左右すると予測し,次の3つの教示を試みた。1) 質問に加えて答も作成すること,2) 質の異なる質問を同時に作成させること(理解を問うもの,問題意識を問うもの,等),3) 明確な目的を与えること(文章の要点理解や文章構造の理解を促すことを目的とする場合,重要な部分を選ぶよう指示)。また,学習者が作成した質問についてフィードバックを行う機会も設けた。授業に参加した学習者の質問を分析した結果,質問作りは文章構造の把握や問題意識の明確化につながる活動であることが確認できた。
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