研究概要 |
本研究は,日本語学習者を対象とした読解において,理解度の自己モニタリングの働きを促す読解学習方法を検討することを目的としている。研究の最終年度は,読解における自己モニタリングを促進するための活動として,文章の内容を他者と説明しあう活動(読んだ文章の内容を紹介する小ボスターを複数の学習者が協働で作成する活動)を提案し,読解授業においてこの活動を取り入れた活動をどのように行えばよいかを検討した。本活動では、グループでのポスター作成過程およびクラスでの発表の2段階で、他の学習者に読んだ内容を説明する必要がある。 中級前半の日本語学習者を対象とした読解授業において、説明活動を2種類の方法で実践した。授業実践としては、(1)読解後にポスターを作成して発表するという流れの授業(実践1)と、(2)読解後にポスターを作成して発表した後、内容のまとめ方(文章構造)に関するフィードバックをクラスで行い、再度ポスターを作成するという流れの授業(実践2)、の2種類を行い、理解度の変化や作成したポスターの内容等を比較した。 その結果、実践1では、学習者によって説明活動の影響が異なり、理解度が向上する学習者がいる一方、理解度が下がる学習者もいた。これは、他者の説明を聞くことによって、理解が誤ったり、混乱したりした学生がいたと考えられる。一方、文章内容の構造化を意識化するフィードバックを与えてポスターの再構成を行った実践2では、文章理解の向上が示唆された。適切な読みの視点を与えることと、再度活動を行うことによって、より多くの学習者の理解が促進される可能性が示された。しかし、実践1・2ともに、自らの理解度を実態よりも高く評価する学習者では活動の効果が見られず、このような学習者に対してどのように理解の修正を促すかが今後の課題である。
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