平成21年度は、日本語学習者を研究対象とした第二言語習得研究や日本語教育の先行研究を収集・整理しつつ、日本語学習者の言語運用データを収集するために、韓国において韓国・朝鮮語母語学習者のインタビュー及び作文データを収集した。 そのデータのうち、本年度は特に対話(インタビュー)のデータに注目し、分析を行った。学習者の中間言語は口頭る発話の方がより直接的に現れると考えられるためである。その結果は「韓国人日本語学習者の誤用分析」(『大阪教育大学紀要 第I部門人文科学』第59巻第1号、印刷中)としてまとめた。本論文を通して、韓国・朝鮮語母語学習者の中間言語には母語からの負の転移の他に、助詞や丁寧形の使用などに学習ストラテジーに起因すると見られる誤用が見られることが明らかになった。 具体的には、助詞については場所の助詞「に」と「で」は韓国・朝鮮語からの正の転移が期待できるにもかかわらず、上級学習者に誤用が見られた。この点については先行研究により指摘されている「ユニット形成のストラテジー」と関連づけ、より特定的なデータ収集を行い詳細に研究を進める必要が認められる。また、丁寧形の使用においては、品詞にかかわらず「んです」の多用が中級から上級の学習者に幅広く見られ、理由としては「過剰般化」が考えられる。この現象が一時的に生じるものか、教室等において適切な指導・気づきの機会を与えなければ化石化につながるものなのかについて、今後分析を進めたい。
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