平成23年度は以下の3点を中心に研究を進めた。 I.日本語学習者の言語使用データ(作文・発話)の収集・蓄積 II.韓国人日本語学習者に見られる誤用の記述と中間言語研究の観点からの分析 III.韓国人日本語学習者とその他の学習者の中間言語の対照 上記Iについては大阪教育大学の所属する留学生に協力を依頼し、インタビュー形式でデータを収集した。平成22年度までは韓国朝鮮語母語話者のデータを中心に研究を進めてきたが、今回のインタビュー調査で多様な母語を背景とする学習者にも研究対象を拡大した。 IIについては「韓国人日本語学習者の誤用分析」(『大阪教育大学紀要 第I部門人文科学』第59巻第1号、2010)で指摘した場所の助詞「に」と「で」を混乱して使用する現象について、韓国で日本語を専攻する学生を主な対象としてアンケート調査を実施し、「韓国人日本語学習者による場所の格助詞『に』と『で』の選択に関する研究」(『大阪教育大学紀要第I部門人文科学』第60巻第2号、2012)としてまとめた。この結果、格助詞の使用に正の言語転移が期待できる韓国語母語話者に場所の格助詞の誤用が見られること、他の言語を母語とする学習者と共通の言語処理ストラテジーがの部に見られることが明らかになった。 また、Iで収集したデータを元に誤用例を分析し、韓国語母語話者以外の日本語学習者の特徴を「留学生の使用する日本語に見られる諸特徴:中間言語分析の観点から」(『大阪教育大学紀要第1部門人文科学』第61巻第1号、投稿中)としてまとめた。
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