研究概要 |
本研究の目的は、英語の熟達度を評価するためのライティング・タスクを開発し、その妥当性を検討することである。理論的基盤としてPienemannの処理可能性理論を援用する。また、同期型コンピュータ媒介コミュニケーション(Synchronic Computer Mediated Communication, SCMC)を用いたライティング・タスクを活用し、コーパス分析の手法を用いた評価システムを開発する。本年度の研究の目的は、初年度に開発したSCMCのタスクの併存的妥当性を検討することと、研究成果のまとめを行うことであった。 (1)併存的妥当性の検討 日本語話者英語学習者である大学生30名に対象に、(a)SCMCのタスク、(b)スピーキングによる口頭タスク、(c)リスニングテスト(Sakai, 2005)を実施した。また、熟達度を測定する外部指標としてTOEIC-IPテストを実施した。機械及び実験手続きの不調により欠損値のある8名を除き、22名を分析対象とした。 まず、SCMCにおいて、2回基準による発達段階の特定を行った結果はStage 5が17人、Stage 4が3人、Stage 2が1人であった。全体的には、明確に高い併存的妥当性を主張する結果とならなかった。スピーキング・タスクによる発達段階においてはあまり相違が見られなかったが、リスニングテストによる発達段階との関係は低かった。教育的応用性の観点からSCMCのタスクを学習者同志のペアで行わせたため一人あたりのデータ量が少なくなってしまった点と理解と産出という認知プロセスの違いがある点から考察された。今後は、ライティング・タスクの実施の仕方や時間を考慮する必要がある。 一方、ライティング・タスクにおいて、オーラルによるインタラクションと同様に意味の交渉が観察された。さらに、SCMCならではの談話的特徴(大文字や記号の利用、複数行にまたがるターンの接続など)も見られた。 (2)研究成果のまとめ 初年度のSCMCタスクの開発については、論文(Examining L2 Synchronous CMC Tasks for Assessment of Online Language Production)としてまとめた。また、併存的妥当性の検討の研究成果は、平成23年度に学会発表をする予定である。
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