本研究は,日本人英語学習者に対する語彙教授法の効果をより詳細に明らかとすることを目標としており,日本人英語学習者を習熟度,動機づけ,学習方略等により分類を行うことで,どのような学習者のタイプには,どのような語彙教授法が最も効果的であるのかを検証することを目的としている。 平成24年度は,日本人英語学習者の語彙学習方略と動機づけという適性の観点から,教授法との関係性を,前年度に引き続き,更に明らかとすることを目的とした。具体的には,平成21年度,平成22年度の調査結果である英語学習者は学習段階において与えられたタスクの要求に応じて,自らの語彙学習方略を変容させるということから,平成23年度の実験に引き続き,日本人英語学習者の動機づけと課題遂行の際に実際に使用した語彙学習方略という学習者の二つの適性と,日本の教室環境における語彙教授および学習場面において頻繁に用いられるリスト形式を用いた学習成果との関係性について明らかとした。 実験時には,学習段階として,未知語からなるL2語のリストの学習時に使用した語彙学習方略からクラスタ分析を用いて,学習者の分類を行い,語彙学習方略と課題成績との関係について分析を行った。その結果,学習者は,語の形式的な側面と意味的な側面の大きく2つの側面において,課題時に用いた語彙学習方略に違いが見られた。また,保持率および反応時間を用いた分析を行った結果,この学習時に学習者が使用する語彙学習方略の種類および頻度に応じて,課題成績である語の正答率および意味情報の判断にかかわる処理の反応時間が異なることが明らかとなった。
|