22年度は、(1)主に昨年度までのデータの分析に基づく成果公表、(2)研究対象とする教育実践の実施、(3)辞書行動調査ブロックの修正と再調査の実施および分析を行った。(1)に関して、対象とする電子掲示板を通じての英語オンライン交流のH.20年度とH.21年度の参加者に対して、明示的な語彙・文法指導を行った際の効果を、事前・事後テスト及び交流での学習者のライティング、及びアンケート結果から分析した。2008年度では特定項目の一斉指導のみを行い、2009年度ではそれに加えて、市販の自動文法学習教材を補助教材として用いて、学習者の自主的な文法学習を支援した。その結果、いずれのケースでも指導実施群の語彙・文法テストスコアの伸びが統計的有意性を示し、項目別に見た際には、(a)定型的で、(b)対人的コンテクストで用いられる表現に伸びが見られた。また、自動文法学習教材については130センテンス以上をこなした学習者についてのみ一定の効果が見られた。これらの結果と実践の概要をCALICO 2010その他で発表した。(2)に関しては、日本を含め、スペイン、トルコ、台湾、中国からの参加者326名(全て看護学生)により英語オンライン交流を実施した。(3)については、(2)の交流において日本人参加者を対象に実施し、英和辞書の検索語として基本語が最も多く(40%)、次いで看護・健康(24%)、生活一般(18%)に関する語彙が多かった。基本語では接続表現が多く含まれていた。これらの結果より、オンライン交流と限られた授業時間での明示的指導のブレンディングは、発話のコンテクストに関連の深い語彙・文法事項に関してその効果が高まる傾向がみられる一方で、より深い語彙・文法理解を実現するためには、そのための時間を十分取る必要があることも示唆された。
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