本研究が課題としてきたのは、室町幕府の外交儀礼と唐物文化に関する基礎的な蒐集と検討とである。研究の成果は、10本以上の学術論文のほか、2冊の一般書に結実し、その成果を広く江湖に問うことができたと考える。いずれも、狭義の外交史に閉じこもるものではなく、表象文化論や政治史、流通経済史などへの架橋を積極的に試みた論著である。 研究課題の前者(外交儀礼論)について言えば、室町殿が行なった外交儀礼を、関連史料の厳密な史料批判や、朝鮮・琉球などとの比較検討をもとに厳密に検討・復元した。 また、研究課題の後者(唐物の政治文化論)に関しては、生糸や絹織物、書画典籍といった文献史料中の唐物を蒐集したほか、それぞれのもつ文化的表象性を剔抉していった。 以上により、外交史と国内史とを単に短絡させるのでも、またまったく異質のものとして峻別するのでもなく、両者の接点を冷静に見通す縁が得られたといえるだろう。
|