第一に、下野(栃木県域)の宇都宮氏・小山氏、下総の結城氏やその支配域を対象に、先行研究や自治体史をもとに、戦国期の政治過程、地域的な領主制の特質について検討に着手した。とくに「今宮祭祀録」や「結城氏新法度」等によって同地域における都市や郷村、在地領主・奉公人層のあり方について検討した。 第二に、栃木県立文書館に寄託されている大島延次郎家文書を閲覧し、その一部を収集して、近世前期における当該地域の都市(宿)と流通・交通のあり方について検討した。 第三に、他地域との比較検討を深めるために、長野県の飯田市歴史研究所に所蔵されている「平沢文書」や他の史料写真帳等を調査・閲覧し、その一部を写真撮影や複写・筆写によって収集し、写真についてはプリントして分析を加えた。それによって、17世紀における信州伊那郡虎岩郷の年貢収取のあり方を、領主支配によって厳密に時期区分して、詳細に跡づけることができた(発表論文参照)。同郷は研究史においても、東国における村請制の成立過程を追跡することができる好個の事例とされてきているが、今回、先行研究の内容を全面的に再検討することができた。この成果は、関東など他地域の村落を分析する際にも重要な足がかりとなるはずである。 第四に、近江(滋賀県域)の土地制度と地域社会構造について、これまでの自身の研究成果を再整理・再検討して、北関東や信州をふくむ他地域との比較検討を進めた。 以上すべてについて来年度も継続して研究を進め、成果の一部を学会等で発表する予定である。
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