初年度である2009年度においては、申請者は1920年代におけるアジア主義者ネットワークに関する研究を行った。具体的には2010年3月に活字化した「「亜細亜民族運動」と外務省--その認識と対応--」にまとめた内容であるが、東南アジア各地で亜細亜民族運動が活性化した1920年代において、外務省はその隆盛をどのように認識し、1926年に実際に日本で開催された「全亜細亜民族会議」に対して、どのような対応をとったのかについての分析を行った。 この研究は、時期的には研究課題である1930年代におけるアジア主義者ネットワークを分析する上での前段階となるべきものであるが、これは単なる2010年度以後の研究の前提というべきものではなく、1920年代と1930年代の比較研究を可能にしたという意味で、今後の研究の礎となる意義を有している。 より具体的に述べるとすれば、申請者は2009年度の研究において、1926年の時点では外務省がアジア主義者ネットワークの形成に対して強い警戒感と危機感を有していたことを実証したが、このような在り方は、1930年代に到っても変わらずに維持されていたのか、或いは変更を余儀なくされていったのか、といった課題が見えてきた。そのような意味においても、2009年度の研究には大きな意味があったと判断できる。
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