平成22年度には、研究成果として「「独立」国という「栓梏」」(『岩波講座 東アジア近現代通史』第6巻、岩波書店、2011年)を執筆した。本論文においては、従来十分な焦点が当てられてこなかったタイ王国の動向について分析を進めた。 申請者は「1930年代における帝国秩序とアジア主義者ネットワークの研究」を研究課題とし、1930年代の帝国間秩序は、植民地宗主国が必要としていた、植民地支配のための情報や技術のみならず、「反植民地」技術を伝播しようとした「帝国の敵」をも育成していったのではなかったのか、という点を考察してきた。1930年代にイギリスからの援助を得ながら国内体制を固めながら、日本の力を利用しようとしたタイのピブーンのあり方もまた、広義のアジア主義者のそれであったといえよう。 今後は、このタイの事例を組み込みながら、さらにアジア主義者ネットワークの研究を進めていく予定である。
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