研究の総括となる2011年度は、東日本大震災の影響により、海外史料調査などが行えなかった点を除けば、概ね予期以上の成果を得ることが出来た。具体的には平成23年度科学研究費助成事業(科学研究費補助金(研究成果公開促進費))をえて、研究成果を『帝国日本の拡張と崩壊「大東亜共栄圏」への歴史的展開』(法政大学出版局、2012年)として刊行することを得た。 その中でも第4章においては、直接「1930年代における帝国秩序とアジア主義者ネットワークの研究」に関連する内容を組み込んだ。具体的には、日本外務省に残されていた外交文書の分析から、日本側が1920年代から30年代にかけて、世界帝国秩序の変容という事実をどの程度掴んでいたのか、そしてその変容をもたらした亜細亜主義者ネットワークに対して、どのように「評価」を変えていったのかを論じた。 またこの点を踏まえ、第7章においては、「大東亜共栄圏」において、日本がアジア民族主義者らを利用しながら、「独立」を許与していく過程を考察した。そこでも本研究課題で得られた知見として、「大東亜共栄圏」が、脱植民地化を図るアジア民族主義者らという他者を継承せざるをえなかったことを重視した分析を行うことができた。 以上のように、平成21年度から23年度にわたって継続してきた課題研究「1930年代における帝国秩序とアジア主義者ネットワークの研究」の成果は、最終年度に形に出来たと考えている。
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