大宝令は古代国家の基本法であり、律令国家の構想を規定したものであるが現存しない。養老令や逸文によって推定されているが、手本とした唐令が現存しなかったため不明な点が多かった。そこで本研究では、大宝令逸文を核として、近年中国で発見された天聖令から復原した唐令を使用するという新たな方法で大宝令の復原を行う。23年度の研究は下記の通りである。 (a)唐日令比較研究については、天聖令を影印本と比較して新たな校訂を行った。さらに、昨年度作成した2段組の唐日令比較表について、上記天聖令の新校訂文と下記の古記データを使用して、より正確なものに改訂した。研究計画では唐令(上段)、大宝令逸文、(中段)、養老令(下段)とする3段組の表を作成するとしていたが、空白が大きくなることから計画を変更し、大宝令逸文を養老令に傍書した2段組の表を作成した。3段組の表については、最も効果のある田令の一部について作成し、『班田収授法の復原的研究』(後掲)に所収した。 (b)『令集解』研究については、『令集解』古記のデータを完成した。昨年度作成した大宝令逸文について、『令集解』刊本と比較することによって、より正確なデータとして改訂した。古記データの写本による校訂は省略し、大宝令引用法を分析した。 上記(a)(b)の成果に基づいた最終年度のまとめとして、11月に歴史学研究会において報告を実施した。そこでは大宝令の編纂方針について、編目による唐令継受の傾向があり、新規定を作成する際に唐令条文を改変して盛り込むことが通例で、それができない場合に新条文を作成することが判明し、とくに編目冒頭の配列を組み替えて規定する傾向があることがわかった。 また、初年度に実施した田令研究を中心として博士学位請求論文を執筆し、博士号(明治大学)を取得し、2012年5月1日に『班田収授法の復原的研究』(吉川弘文館)を刊行予定である。
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