本年度の研究活動をまとめると、以下の4点に集約できる。(1)オレゴン大学ナイトライブリーのスペシャルコレクションズが所蔵している「ウッダード文書」の調査、(2)国内の占領期史料・文献の調査、(3)これまでに収集した史料の読解・整理、(4)研究成果のまとめ。最終年度ということから、特に(3)(4)を重点的に取り組んだ。具体的には、本研究の目的である『The Allied Occupation of Japan 1945-1952 and Japanese Religions』(E.J.Brill 1972)の再検証を行うべく、「ウッダード文書」に収められている本書の初期原稿や関係資料の分析に取り組んだ。これにより、本書の成立過程の一部を解明できた。本書が出版されるまでには、民間情報教育局(CIE)宗教課課長のW・K・バンスや民政局(GS)係官のC・H・ピーク、元駐日米国大使でハーバード大学日本研究所のE・O・ライシャワーといった占領軍関係者や研究者のほか、クレアモント大学に留学していた阿部美哉(後に文化庁宗務課、國學院大學学長)の助言を受けながら改稿・編集が進められたことが判った。彼らの助言によって、初期原稿から多くのページが削除されたといった事実や、記述内容で影響を受けたと推定できる箇所を具体的に明らかにした。また、正本と草稿の比較研究を行った。未掲載に終わった草稿の記述で、ウッダードの真意を理解する上で重要な手がかりが得られる部分を確認できた。これらの研究成果は論文にまとめ、発表した。従来GHQの宗教政策史において基礎的文献とされてきた本書の問題点を実証的に指摘できたと考える。本研究で知り得た史料には、GHQの宗教政策に関する研究を進める上で有益なものが多く含まれる。これらを活用して、今後も研究を継続・発展させていく予定である。
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