地域支配構造の第二段階再編期(米騒動後)について、特に警察社会事業施設と方面活動との関係、方面委員として任命された警察官の活動の実態と民間の方面委員の活動との違いなどに留意しながら、当該期の地域支配の実態について検討した。分析した主な資料は、方面委員のリーダー達の会合(常務委員聯合会)の議事録が掲載されている『大阪府方面委員事業年報』(『大阪市・府社会調査報告書』に復刻掲載)と方面委員制度の理念的指導者小河滋次郎が主宰した雑誌『救済研究』や『社会事業研究』などである。これらの資料を分析しながら、以下のことを明らかにした。第一に、方面委員制度発足当初に、貧困世帯の生活調査方法については、曾根崎警察署など警察から方面委員に対して指導があったこと、第二に、方面委員には制度発足以前から貧困世帯に対する調査・取締に経験のある警察官が任命されていたこと、第三に、しかし、「官僚・強制・画一的」な取り締まりを本質とする警察の方面活動には本来的に限界があること、そしてその背景には、当時の民衆の反警察感情が存在していたこと、第四にその警察の社会事業の限界を克服するために創設された制度こそが、方面委員制度であることなどを明らかにした。また、部分的ではあるが、米騒動後における中崎町周辺の貧困世帯に対する警察の活動についても解明することができた。ただし、米騒動以前の警察の活動との比較検討などにまだ課題が残されている。
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